seikox’s diary

掲示板 http://9205.teacup.com/seiko/bbs 島に売られ泳いで逃げてきた女の復讐戦。人権問題、性被害に関心ある方、参戦ください

第6章若いのになんでこんなとこおんの?

1階の宴会場には、10人ぐらいのおっさんが、浴衣姿で集まっていた。女の子バアさん含むは15人ぐらいだろうか。私が最年少なのは一目でわかる。お酒を注いで回る彼女らを尻目に、私は部屋の隅のほうでボケーっとしていた。それでも男は寄ってくる。「おネエちゃん、名前は?」「メグミ」「いくつ?」「あ、19」「へえ、若いのになんでおるの」「うん、まあ旅行で来てから色々と…」

「ふーん」彼氏に売られたなんて、カッコ悪くて言えたもんじゃない。ゴマかしゴマかし、私は場をしのいだ。宴会も終わりに近付いたとき、しょちゅうちょっかいを出しにきていた1人の男が、ベロンベロンに酔っ払いながら私の肩を抱いて、女将さんに声をかけた。「おばちゃーん、このコ」「はいはーい」男は、後に私たちがマスターと呼ぶことになる1人のおっさんに4万円を渡した。ロングだ。こんな酔っ払いと朝の7時まで付き合わされるのか。黙って3階にある男の客室に連れて行かれる。時間がたっぷりあるので余裕をかましたか、部屋に着くと男はゴロンと横になった。そしてすぐに聞こえてくる寝息。これは助かった。私はこっそり部屋を抜け出した。廊下ではバアさんたちが忙しそうに歩き回っている。「あの、お腹すいたんですけど」家を出てからまだ何も食べていない。バアさんの1人にそう伝えると、あっちで食べなさいと食事部屋を案内された。

デッカイおひつにご飯と味噌汁。筍の煮付けや焼き魚などのおかずも並んでいる。好きなだけ食べていいらしい。味気ない夕食を口にする間も、廊下から慌ただしい音が聞こえてくる。これから毎日、私はここで働くのか。200万返すには、ロング2万円✖️100日。冗談じゃない。寝転がったり外を眺めてボンヤリしながら、私は朝になるのを待った。夜が明けたら船に乗って帰ろう。別に私が200万借りたわけじゃないんだから。それにしても許せないのは三嶋だ。あんなに優しかったくせに私を売るなんて。ウトウトしていると、夜中になって1人の女の子が食事部屋にやってきた。内田有紀によく似たショートカットの可愛い子。15人ぐらいいる女の子の子の中でも、唯一かなわんなと思っていたコだ。

畳に座って彼女は話しかけてきた。

「あんた、なんでここ来たん?」「彼氏に売られて」「ふーん、そうなんや」彼女も最初は100万で売られてきたけれど、今は貯金をするために大阪から出稼ぎにきているんだそうだ。こんなキレイな人が可愛そうに。「すぐ返せるから大丈夫よ。外にも出れるようになるし」彼女はお姉さんのようにいろんなことを教えてくれた。「メグミちゃんやったけ。ここ物売りが来るけど買ったらアカンよ」聞けば、どこから持ってくるのか、行商人みたいなおばちゃんがロレックスの時計やグッチのバッグなどを売りに来るらしく、それを買うと借金が膨らんでなかなか帰れなくなるんだそうだ。その後、客室に戻った有紀さんと別れて、私は女の子6人ぐらいが雑魚寝する寝室で眠った。とても疲れていた。ロング終了時間の朝7時、昨日のおっさんを起こしに行くと、いきなり怒鳴られた。

「1回もやってないっちゅうのはどういうこっちゃ!」怒りたくなるのもよくわかるけど、勝手に眠ったのはそっちのほう。私の責任じゃない。「うるさいわ。なんかあるんやったら女将さんに言うて」一晩で私は気丈な女になっていた。ダテに中学からグレてたわけじゃない。